通信の最適化とは|メリット・デメリットについてわかりやすく解説
勝手に通信の最適化されてるようだけど一体何だろう?
こんな疑問について、現役ネットワークエンジニアが解説していきます。
こんなこと良くありませんか?
「ストリーミング再生の読み込み速度が遅い」「画像や写真が最近なんだか画質が悪い」
格安SIMを含む、利用している通信事業者によっては自動的に通信の最適化がされておりストリーミング再生時の読み込み速度があえて抑えられていたり、ダウンロードした画像・写真の画質が劣化していたりということがあります。
これらの原因は通信回線上で自動で行われている「通信の最適化」によるものだったりするので、本記事ではその「通信の最適化」の正体について解説していきます。
そもそも通信の最適化とは
一言で「通信の最適化」と言っても様々な技術的な話があり、複数が絡み合って通信の最適化を実現しています。
例えば以下のようなものが「通信の最適化」を構成する要素としてあります。
- 通信速度を調整する帯域制御
- 通信データ量を減らすコンテンツ圧縮
- 通信データの内容によって優先制御
最適化という名のとおり、近年5Gの普及も相まって爆発的に通信データトラフィックが増加してきましたが、通信回線の容量はそこまで大きく変わるものではなく、徐々にひっ迫してきており混雑している状況です。
混雑している状態だとユーザー全体の通信速度の低下を招くため、各通信事業者は、
- 通信トラフィック全体を減らしたい!
- 全利用者の通信速度を向上させたい!
という考えを軸にして、通信を最適化しようとしていました。
「通信トラフィック全体を減らしたい」を実現するためには
トラフィックを減らす簡単な方法は「加入者を減らすこと」です。
とは言ってもそんなことするわけにはいかないので、それぞれの通信トラフィックの中でデータサイズを劣化させても良いものを劣化させることでトラフィック量を減らしていきます。
よくWindowsとか使ってるとファイルサイズを小さくするために圧縮しますよね?そんなイメージです。
詳しくは下記のメリットの項で説明します。
「全利用者の通信速度を向上させたい」を実現するためには
通信回線の太さには限界があるので、全員が全員にマックス速度を割り当てることは不可能なのです。
そのため、通信速度がゲキ遅な人がいなくなるように、大量に利用し帯域を占有しているユーザーに対して制限をかけます。
これ、実はユーザー個々のデータパケットには優先順位が無いので、使ってる人に使ってるだけの帯域が割り当てられてしまうのですよね。いわゆる使ったもん勝ちってやつです。
そのため、大量に使ってるユーザーの帯域に制限をかけることで、その人以外のユーザーにも一定の帯域を確保できるようになります。
このようなの内容を含み「通信の最適化」についてメリット・デメリットの観点から以下より解説していきます。
通信の最適化のメリット
僕たちユーザー側が通信の最適化によりどのようなメリットや恩恵を受けるのかについてです。
一言で言ってしまうと通信の最適化により「スマホで快適に閲覧ができる」状態にしてくれています。
- Web閲覧時のデータ量が節約できる
- ページの読み込み速度が向上する
- ストリーミング再生でもデータ量を節約できる
- データ量の節約が料金の節約に繋がる
それぞれ詳しく確認していきます。
Web閲覧時のデータ量が節約できる
画像データなどを本来のサイズからいくらか圧縮(劣化)させ通信を行うため、節約になります。
例えばWEBページ等を閲覧する際に画像が複数枚埋め込まれていたりしますよね。1枚が3MBのデータサイズの画像が3枚埋め込まれたページでは、テキスト(1MBと仮定)と合わせて大体10MB程度のデータ量を消費します。
もし通信の最適化により、例えば画像データサイズを1MBにまで抑えることができると、計4MB程度で済むようになります。
そのため、通信の最適化を行わない場合よりも6MB程度節約することが可能になります。
このようなことを行っても一見問題ないように見えるのは、画像の圧縮技術などにより人間の目にはわからない程度に画質を劣化させているからです。
ページの読み込み速度が向上する
WEBページの中にはページコンテンツが中々表示されないようなページもあります。この要因の1つとしてデータサイズが大きく、ダウンロード待ちしているような状態となっていることがあります。
上記で解説したように画像などのデータサイズの大きいデータを圧縮し、読み込み速度を上げることが可能になります。
そのため、大半の方は嬉しいと感じるのではないでしょうか。
ストリーミング再生でもデータ量を節約できる
例えばYouTubeなどのストリーミング再生技術では、動画が途中で途切れないようにユーザーの再生速度よりも速い速度で動画をダウンロードすることで、動画丸々一本をダウンロード完了する前から再生できるようになりました。
ただ、ユーザーよりも先に先に読み込んでいくため、途中で観なくなると、少し先までダウンロードしていた分が無駄になってしまいます。
もう少し簡単に言うと、ダウンロードしている(データ量を消費している)のに観なかった部分が発生しその分無駄になってしまいます。
YouTube観てて途中で「なんか飽きたな~」と思い別の動画へ移りますよね。これ意外と無駄なデータ量が発生しています。
そのため、通信の最適化を行うことでストリーミング再生中の読み込み速度を落とし、ユーザーの再生速度とほぼ同じにすることで極力無駄にダウンロードする分を減らし、データ量の節約となります。
データ量の節約が料金の節約に繋がる
使用するデータ量が少なければその分料金プランを低価格なものへ変更できるため、消費データ量の節約が月額料金の節約に繋がります。
もし、いままで20GB超えていた方が20GB未満になった場合、楽天モバイルでは1,100円節約できることになるので、毎日の少量の節約の結果が数ギガの節約になります。
参考ですが下記が楽天モバイルの料金です。
データ使用量 | 月額料金 |
---|---|
3GB~20GB未満 | 2,178円 |
20GB以上 | 3,278円 |
すると年間で12,000円節約できますよ?塵も積もれば山となる理論です。
通信の最適化のデメリット
では、通信の最適化によるユーザー側のデメリットはなにかあるのか、という話です。
- データの改変にあたる可能性
- 非可逆圧縮のため、ユーザー側で元に戻せない
- テザリングを使いPCでWEB閲覧をすると画質の劣化がわかる
- 一部コンテンツが利用不可になる可能性がある
それぞれ詳しく確認していきます。
データの改変にあたる可能性
運営側のサーバーからダウンロードしたゲーム内の画像のサイズが意図しないものに変わっているため、ゲームの整合性チェックなどで引っかかる可能性があります。
過去にこれが問題になった事例があったので引用で載せておきます。
つまり、通信の最適化によりゲームデータファイルのダウンロード前のハッシュ値とダウンロード完了後のハッシュ値とが変更されてしまっていた(つまり整合性がない状態)ためダウンロードエラーとなったのではないかと思われます。
過去にこのような事例があったため、近年では通信の暗号化がされていたりと対策が取られているところが多いです。
非可逆圧縮のため、ユーザー側で元に戻せない
メリットの項で画像データなどを圧縮にデータサイズを減らしていると記載しましたが、これはユーザー側で元に戻せません。
そのため、WEBサイト運営者が写真の品質がよいページを作ったのにも関わらず、通信の最適化が知らず識らずのうちに行われていると、閲覧者側は「低品質の写真のサイトだな」と思ってしまうことです。
対象のSIMカードを使っている間はずっと上記の状態なので、運営者と閲覧者の認識の違いは数年間続くことになります。
テザリングを使いPCでWEB閲覧をすると画質の劣化がわかる
スマートフォンならば画面も小さいため、圧縮しても人間の目にはわからないかもしれませんが、PCで閲覧した場合は画質の劣化は顕著に現れる可能性があります。
そのため、テザリングを多用する方にとっては少々まずいと思われます。
一部コンテンツが利用不可になる可能性がある
通信データのヘッダ情報が圧縮されることによる影響として、厳密な通信を必要とする(送信者−受信者間でデータの整合性を取るような)サービス・コンテンツが使えなくなる可能性があります。
圧縮箇所や整合性の取り方などにより条件が変わるので、何のどんなサービスかをここで特定することはできませんが、何かしら今後の通信に影響を与えるかもしれません。
通信の最適化(データ圧縮)は解除可能なところが多い
スマホで快適な閲覧ができ、回線ひっ迫時でもデータ量を減らしユーザー全体の通信速度を向上できるようになることから、通信の最適化の中でもデータ圧縮を実施しているキャリアもいくつかあります。(基本、ひっ迫時のみ最適化する)
下記に通信の最適化が取り入れられている通信事業者を記載しておきますので参考にしてください。(有無の確認とれたもののみ記載)
もし該当する方は、必要に応じて「通信の最適化」を解除しておきましょう。
一方で、au、ソフトバンク、Y!mobile、LINEMO、UQモバイル
※他はまだ探せていないのと、もし記載を発見したり誤りがあった場合はお知らせください。
auは最適化されているとネット上に情報がありましたが、最近ではそのような記述が消えているっぽく、速度制限に変わったように見受けられます。
ぐっと通信速度を抑えられてしまうのでこれはこれで嫌なんですけどね。公平性の担保という観点からすると仕方がないですが。。。
サイト運営者の「通信の最適化」の回避策
WEBサイトを運営している方からすると、せっかく作った自身のサイトコンテンツを改変されユーザー側に届けていることになります。
そのような事態にならないためにもSSL対応によりHTTPS化を行っておきましょう。
僕のこのサイト「しむきっず」でも立ち上げた段階からHTTPS化していますし、最近だとHTTPSが推奨されている流れから多くのサイトでも取り入れられています。
本記事のまとめ
本記事では「通信の最適化」について、ユーザー側のメリット・デメリットの観点からご紹介してきました。
WEB閲覧時のスピードが上がり、使用データ量も少なくなることからユーザーにとっては非常にメリットを感じる通信の仕組みであることが分かったと思います。
その一方で、通信の最適化は非可逆圧縮によるデータの圧縮(劣化)を行っているため、オリジナルデータを受信できなくなることから高画質なデータが欲しくても低画質なデータとなってしまったりと特定のユーザーにとってはデメリットとなる点がいくつかあります。
特にデータファイルのダウンロード前後でハッシュ値が変わってしまうことから、通信エラーを引き起こす事例もあります。
最近では「通信の最適化」を解除できる通信事業者が多いので、解除したい方は解除しておきましょう。