格安SIMが安い理由と仕組み
格安SIMは「通信速度が遅く低品質だから安いんだ」と言われていますが、決して低品質ではないという認識を持っていただきたく、本記事を執筆しています。
本記事では、現役ネットワークエンジニアの僕が格安SIMが大手携帯会社と比べ安い理由について解説しています。
MNO(大手事業者)とMVNO(格安SIM事業者)の違いは自社回線を持つかどうか
MNOは正式には「Mobile Network Operator」の略で移動体通信事業者と呼ばれます。
一般的にMNOと呼ばれるドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルは自社の回線設備(基地局)を持っています。
一方MVNOは「Mobile Virtual Network Operator」の略で、バーチャルの考え方が追加され仮想移動体通信事業者と呼ばれます。
何がバーチャルかというと、自社回線を持っていないけど持っているように見せかけて通信サービスを提供しています。
見せかけるというのは、キャリアから回線を借りているという意味合いになります。
MNO | 自社で回線設備を持つ(いわゆる大手キャリア) |
MVNO | 自社で回線設備を持たず借りている事業者 |
つまり格安SIMで使われている回線は、大手キャリアの回線設備を使っているのです。
そのため、決して低品質という訳ではありません。
いやいや通信速度めっちゃ遅いじゃん。
というツッコミが入ると思いますけど、それは回線の借り方が影響しています。
回線を借りるということはどういうこと?
例えば、格安SIMにもドコモ回線を利用した格安SIM、au回線を利用した格安SIM、ソフトバンク回線を使用した格安SIMがあります。
僕が使用していたOCNモバイルONEを例に挙げます。
OCNモバイルONEではドコモ回線を借りて通信サービスの提供を行っています。
借りているといっても、回線の全てを借りているわけではなく、一部を利用させてもらってるイメージになります。
”通信速度が速い”というのは言い換えると”回線の帯域幅が大きい(太い)”と表すことができます。
例えば高速道路の車線が多いイメージです。
その中で格安SIMは、一部を借りている(例えば10車線のうち1車線借りているイメージ)ため帯域幅が小さいと言えます。
そのため、同時通信しているユーザーが増えればその分大手キャリアよりも影響を受けやすく、通信速度が遅くなってしまうのです。
もちろん1車線だけ借りてたとしても、がら空きならば大手と同じくらいの速度が出ます。
通信帯域を高速道路と表した場合、中を通るパケットは車と表すことが多いです。しかし、車自身は速度を変えることが可能ですが、パケット自身の速度は変えられない(パケット速度という概念がない)と考えてください。
通信速度に関わるのは帯域幅の大きさです。「帯域幅が大きい=車線が多い」と考えてもらえればイメージしやすいかと思います。100個のパケットを1車線で送るのか100車線で送るのかを考えると、100個直列よりも100車線で1個ずつ並列で送る方が、100個全部のパケットの到着するのは並列の方が速いというイメージです。
格安SIMはなぜ安いのか?コストの観点から見る
格安SIMが安い理由を、大手キャリアと比べながら確認していきましょう。
MNO(大手キャリア)にかかるコスト | 自社回線設備の運営維持コスト 回線基地局の増設・回線増速のコスト キャリアショップの賃料・人件費 など |
MVNO(格安SIM事業者)にかかるコスト | 大手キャリアからの回線レンタル料 オンラインサポートのオペレーター人件費 など |
NMO(大手キャリア)にかかるコスト
MNO(大手キャリア)にかかるコスト | 自社回線設備の運営維持コスト 回線基地局の増設・回線増速のコスト キャリアショップの賃料・人件費 など |
上述したように、MNOは自社の回線設備を持っています。
通信インフラとも呼ばれているくらいに「ネットワーク」は現代にとってはなくてはならないものなので、障害が発生し止まることは許されず非常に重要な役割を担っています。
そのため、運用費用、メンテナンス費用、トラブル発生時の対応費用などがかかってしまいます。
また、キャリアは自社のキャリアショップを数多く展開しているため、これらのテナント料や運営コスト、人件費コストもかかっています。
これらの費用分を回収するためには、大手キャリアは料金プランを高く設定せざるを得ないという状況なのです。
確かによく考えてみるとキャリアショップはそこら中にあるので、何かあった時にサポートは受けやすいです。
ですが、あまりにも過剰にあるようにも思います。
特に高齢者に需要があるようで、高齢者のたまり場になっているとも聞きますね。
MVNO(格安SIM)にかかるコスト
MVNO(格安SIM事業者)にかかるコスト | 大手キャリアからの回線レンタル料 オンラインサポートのオペレーター人件費 など |
一方で、格安SIMを見ていきましょう。
格安SIMであるMVNOは自社回線を持っておらず、キャリアから回線を借りてサービスをしていることは上述したとおりです。
自社回線ではないのでキャリアのような運用費用やメンテナンス費用は一切かかっていません。
その代わり大手キャリアから回線レンタルしているため、回線レンタル料を支払っています。
あくまでキャリアから回線の一部を借りた上で自社サービスとしてユーザーに通信サービスを提供しています。
メンテンナンス費用も不要、設備の運用保守費も不要、キャリアショップほぼ無しのため、コストが全くかからないんですね。回線レンタル料だけ何とかすれば良いんです。
そのため、格安SIMは「遅い」けど「安い」という位置づけになるのです。
加えて、キャリアショップがなく手厚いサポートができないという点だけを見て「サポート品質が悪いから安い」だとか、言われるようになってしまいました。
- 格安SIMは、自社で回線設備を持っておらず設備維持コストがかからない
- キャリアショップがなく人件費コストもほとんどかからない
- 大手キャリアから回線の一部を借りているため速度は低下しやすい
大手キャリアの回線設備を借りている(基地局は数多く存在している)ため、格安SIMが”繋がりにくい”というのは基本的にはあり得ません。だけど回線の一部を借りているから”遅い”ことはあります。
そのため、正しい表現をすると”繋がるけど遅い”です。
格安SIMの速度でも十分使えます
通信速度は遅くはなるものの、ネットワークエンジニアをしている僕でも十分活用できる分の速度は出るので、子どものスマホには最適だと思います。
そして、通信速度に特にこだわりがない大人の方も、料金節約のために格安SIMへの乗り換えてみましょう!
一生支払い続けるスマホ代なので、今からでも決して遅くありません。少しでも格安SIMの印象が良くなってもらえると嬉しいです。
近年では大手キャリアの格安ブランドも展開されており、安さと早さを両立した格安SIMも登場しています。
特にLINEMOは個人的には子どものスマホに特におすすめと考えています。
理由については、子供向け格安SIMは【LINEMO】がおすすめと断言する4つの理由をご覧ください。